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「朝だ。雨がふっている。朝だ雨(アサダアメ)だ」という、あまりにも有名なフレーズから始まる「おたまじゃくしの叛乱」を始め、“ヨコジュン”のハチャハチャぶりが大爆発! 1976〜78年に発表された、横田順彌初期の傑作ハチャハチャ短編集です。 平井和正に「ウルフランド」の書き直しを余儀なくさせた「メグロの決死圏」(「グヂャメヂャSFはこうして創られる!?」改題)も収録。(※) 読者はこの笑撃に耐えられるのか?! ※「奇想天外」誌に平井和正によって連載された「ウルフランド」の最終回は、当初、登場人物が一堂に会して作者をいびる座談会形式で書かれるはずだった。しかし、その前月に掲載された横田順彌の「グヂャメヂャSFはこうして創られる!?」は、平井和正の構想に細部に至るまで酷似しており、急遽書き直しを余儀なくされたのであった。その経緯は、「ウルフランド PART VI 平井和正氏・急逝・追悼座談会」に詳しい。なお、ボツになった座談会バージョンは、ウルフガイ・ドットコムの「掘り出し物」コーナーで、「ウルフガイ登場人物の座談会」として無償公開されている。 ●目次 おたまじゃくしの叛乱 鯨が出て来た日 脱線! たいむましん奇譚 メグロの決死圏 くみとり物語 空から墜ちてきた轢死体 日本ちんぼ* 20**年宇宙の旅 STAR BAWS ●立ち読み 脱線! たいむましん奇譚 「ぶひょうー! そ、それは、ほ、ほんとうですか?」 俺は物語がはじまるなり驚声をあげた。これこそまさしく、開巻驚奇だ。いや、快感狂気というべきか。 なぜ、俺は登場するやいなや驚声をあげたのか!? これには、なにかわけがありそうなのだが、いまのところ、そのわけは誰にもわからない。なにしろ、この俺だって、まだ全然わかっていないのだ。だいたい、俺はいまどこにいるのだろう? と思いながら、あたりを見回すと、ここは地の果て東京の港区は赤坂の人けのない児童公園のベンチ。時は、花も桜の散り終ってしまった四月下旬の日曜日、午後七時三十分だ。 そこで、冒頭の驚声の原因をつきとめようと、ひょいと脇を見れば恐い蟹(こはいかに)、水もしたたる絶世の美女が、あれよあれよという俺の前で帯をするするサラサラと解きはじめ、「ああ〜、あたし、もうどうなっちゃってもかまわないの。あなたのいいようになさってえ〜ん」 と甘ったるい声をだす。したがって、俺は、「ぶひょうー! そ、それは、ほ、ほんとうですか?」 と驚きの声をあげた。 ――と話が進めば、これはひょっとして、もしかして、この作者には珍らしいポルノSFじゃなかろうかなどと、俺も読者も心がうきうきしてくるのだけど、世の中というものは、そんなにうまくはできてない。 だから、ひょいと脇を見ると、齢(よわ)い七十路を越えた白髪白髯白衣の実験着姿の白板(パイパン)の暗刻みたいな老人が坐っていて、つい、いましがた俺に向かってなにやらいったらしく、俺はそのことばに驚いて、 「ぶひょうー! そ、それは、ほ、ほんとうですか?」 と答えた。というのが、どうも真相らしいのだ。 俺の名前は板垣進助。最近はほとんど見かけなくなってしまった百円札の親戚みたいな名前だ。むろん、板垣退助とは、なんの関係もない。自称美男子、他称は不明。年齢は二十六歳、独身で、フリーの三流ルポライター。 その時、俺は怒っていた。ものすごく怒っていた。それは、次のような事情に起因する。かいつまんで説明しよう。 土曜日の夜、どうも風邪ぎみでからだの調子がおもわしくなく、薬でも飲んで早めに寝てしまおうとしていると、悪友連中からマージャンの誘いの電話がかかってきて引っぱりだされ、どうせこんな時は勝つわけがない、といやな予感に襲われながら卓を囲んでみると、案の定、もののみごとに役満を二度もふりこんでしまい、こうなっては途中でやめるというわけにもいかず、結局徹夜になって、大枚五万円という金をふんだくられ、ふてくされて明方六時ごろ北千住のアパートにもどり、さあ、ひと眠りしようかなとふとんを敷き終えたところに、俺の数少ないスポンサーのひとつで、よく仕事をまわしてはくれるのだけれども、いつも、むり難題をふっかけては俺を困らせる怪奇珍現象雑誌『吃驚仰天(ぴっくりぎょうてん)』の社長で編集長で営業で経理でコピーライターでデザイナーでレイアウターでイラストレーターでエレベーターでグライダーでガスライターの江出田から電話があり、実はいましがた、奥秩父の山奥にUFOが団体で出現する場所があるとの情報を得たから、これからすぐに取材に行き、今日中に原稿にして届けてくれと無茶苦茶なことをいわれ、「徹マンで眠いからいやです」というわけにもいかず、なんといってもスポンサーは神さまだから「はい、いってまいります」とうれしそうな声をだして、カメラとテレコを両手にぶらさげ、アパートから国電と私電とエスカレーターとバスとケーブルカーとロープウェイを乗り継いで、三時間半もかかって山道を迷いながら、ようやく目的地にたどりついてみれば、そこにはUFOなんか飛んでなくて、欠陥おつむのお兄さんがひとりいて、勤めていたアルミ食器会社をクビになった腹いせに、倉庫からお皿だのお鍋だのを千個の十倍も盗みだし、山のてっペんからカタパルトで投げ飛ばしていたのがUFO事件の真相と判明し、がっかりするやら泣きたくなるやらを、じっとガマンの大五郎でこらえ、メシも食わずにアパートにUターンし、必死に睡魔と闘いながら、それでも生活のためだから、その顛末をなんとかかんとか記事にして、赤坂のボロビルにある『吃驚仰天』のオフィスを訪ね、「こんなもんでどうでしょう?」と原稿を渡すと、江出田はまがりなりにも経営者なんだから、けちけちしないで〈上〉を食えばいいものを、昼に食った〈並〉の天ぷらそばのエビにあたったらしく、「下痢だ、下痢だ、ビリビリだ!!」といいながら、腹を押えてのたうちまわり、俺の血と汗と涙の結晶で綴った原稿を持ってトイレにとびこみ、半分ばかり読みすすんだところで、いま時珍らしい汲み取り式のクソツボの中に落っことしてしまい、あやまるどころか反対に、「ありゃ、とうてい記事にはならん。どうも、ごくろうさんでした。はい、これ足代に食事代」といって、五千円札を一枚俺に渡そうとするから、「そりゃ、あんまりじゃありませんか、江出田さん」といえば、「おや、いうね。一丁前にこのへボライターが」とケンカを売ってくるので「おお、おもしれえ。ヘボライターとは許せない。板垣死すとも自由は死せず。堪忍袋の緒は切れた。やるならやってあげましょう!!」と啖呵をきって、グイとばかりに胸ぐらをひっ掴めば、ウソかマコトかマコトかウソか、「ちょっと待て、ウンチは急に止まらない。また、腹痛だ、はらいただ!!」といい残してふたたびトイレにかけこんで、一時間たってもでてこなかったのだ。 これが怒らずにいられようか、俺は怒った。興奮した。読んでるあなたも怒るだろう。もし、あなたがこれを読んでも少しも怒らないというのなら、俺とあなたは性格の不一致。とても一緒にゃ暮せない。ここで、すっきり別れよう。離婚届にハンコを押そう。 そんなわけで、三流ルポライターであるばかりに、まるで虫けら同然の仕うちを受けた俺は、 「ふざけやがって、このクソ野郎!!」 とトイレの外から大声でわめき、ドアを力いっぱい蹴とばして、ネオンの街へとびだした。 ところが、一応のところはかっこよく外へとびだしてはみたものの、なんとも怒りはおさまらない。ちょっとヤクザなルポライターが、雑誌の編集長とケンカして、夜の赤坂へとびだしたとあれば、有名作家のハードボイルド小説なら、いきつけのバーにでもかけこんで、ボトルの一本も空にする。 しかしながら、かわいそうにも哀れにも、この俺の場合そんなわけにはいかなかった。というのは、俺もいまはじめて知ったのだが、俺はいつのまにか酒がまったく飲めないキャラクターにされてしまっていたからだ。 そこで、俺はしかたなく、怒る心をなだめながら、近くの和菓子屋に足を向け、季節の味のかしわ餅を十五個ばかり買いこんだ。ヤケ酒がわりに食べるのだ。 俺はヤケかしわ餅を食う姿など、なるべく他人に見せたくなかったので、ネオン街から少し離れた児童公園まで足を運ぶと、うす暗い水銀灯の下のベンチに腰をおろし、 「ちくしょう! 江出田のやつ!!」 と吐き捨てるようにつぶやき、もう然とかしわ餅を食いはじめた。そして、七個目を口に運ぼうとした時だ。なにものかが、ベンチへ近づいてくる足音を耳にした。 俺はあわててかしわ餅を上衣の内ポケットにねじこむと、ベンチから立ちあがり、身がまえて呼ばわった。 「な、なに者だ!! 名を名乗れ!!」 すると、聞き憶えのある老人の声がこういった。 「赤胴鈴之助だあー!!」 ♪ 剣をとっては日本一の、夢は大きな少年剣士〜 俺は予期せぬ返事に早くも頭が混乱し、歌を歌いながらベンチのまわりを走りまわった。そして、途中ではたと気がついた。そういえば、作者はこれとよく似たギャグを以前別の話で使ったことがあるぞ!! すると、先ほどの聞き憶えのある声が、ひそひそといった。 「しーっ!! それは、もうだいぶ以前のことだ。黙っていればわかりゃせん」 「あっ、そういうあなたは、もしや松戸博士ではありませんか?」 「そうじゃ、松戸じゃよ。久しぶりじゃねえ、板垣くん」 白髪白髯白衣の老人が、俺の顔を見てニッコリと笑った。 松戸歳圓博士――といっても、知らない人は知らないだろうが、知っている人は知っている大天才科学者だ。もともとは農学博士なのだが、専門外の分野にもめったやたらに強い。博士がこれまでに発明したり発見した科学的業績は、それこそ書きだしたら枚挙にいとまがない。あの発明王のエジソンや平賀源内、柳家金語楼もまっ青だ。 (続きは製品版でどうぞ)
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